夜の星落ちる時
(こうして皆で準備を進めていき、いよいよ設置当日になった)
(ゲーム開発部はプレイしてくれた人の意見の反映と、バグの修正を速やかにするために部室で待機していた)
ユズ「い、いよいよだね……」
ミドリ「な、なんだか緊張してきたね」
アリス「きっと、アリスたちなら大丈夫です!」
モモイ「そうだよ、私たちなら大丈夫だよ!」
テレス「ああ、私たちなら……」
テレス「私たちが力を合わせれば、出来ないことなどないさ」
"テレスの言う通りだね"
"皆ならきっと大丈夫"
"ここまで頑張ってきたのを見てきた、先生が保証するよ"
テレス「ほう、先生も中々粋なことを言う」
テレス「それでは部長、せっかくだから号令をお願いしてもいいかな?」
ユズ「え!?え、えっと……が、頑張るぞー」
ゲーム開発部&先生「「「「「"おー!!"」」」」」
(そこからは皆大忙しだった)
モモイ「うわ、このアイデア滅茶苦茶いい!ねえねえ、これ取り入れようよ!」
テレス「すまないが後だ!思ったよりバグが出てきてる!」
ユズ「あわ、あわわわわ」
アリス「うわーん!かなり好評ですけど、そのせいでファンレターと改善案とバグ報告がごっちゃになってます!」
ミドリ「と、取り敢えず私とアリスちゃんで分類しなくちゃ」
テレス「モモイはこっちを手伝ってくれ!いけつか洒落にならないものがある!」
モモイ「わ、わかった!」
(それは大忙しだったけど、とても充実していて、楽しい時間だった)
(騒がしく、わちゃわちゃしていて、まさに青春とはこれ、と言わんばかりの)
(外の喧騒など気にならないぐらい、素晴らしい時間だった)
ピロン
"……?"
モモイ「ん?先生、どうしたの?」
"ユウカが私たちを読んでるみたい"
モモイ、ミドリ、アリス、ユズ「「「「?」」」」
テレス「…………」
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さあ、始めよう
暗く、永い、夜は今終わろうとしている
実験、観察、検証、それらをひたすら重ねる雌伏の時間は終わりを告げる
さあ、今こそ安寧という実験室から抜け出そう
そして太陽の加護を宿す"学び舎(リュケイオン)"にて共に学ぼうじゃないか
ビトレイアル・アーカイブ
──そして紡ごう、『崇高』に至るための物語を
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(少し時を戻して)
ミレニアム生A「うわっ、やられたっ!もう1回!」
ミレニアム生B「ちょっと、後ろがつっかえてるんだからもう一度並び直してよ」
ミレニアム生A「でも、次やればこいつ倒せ……いや、こんなところで言い争っても仕方ないか」
ミレニアム生A「くっ、出来れば今の感覚が残っているうちにやりたかった」
ミレニアム生C「にしても今回のゲーム面白いよね」
ミレニアム生D「わかる、あのTSC作ったゲーム開発部とは思えないくらいの出来だよ」
ミレニアム生C「……噂でしか聞いたことないけど、そんなに酷いの?」
ミレニアム生D「好奇心は猫をも殺す、ってまさにこの事だって実感したよ。まあ2の方はマシだったけどね」
ミレニアム生C「へー、まあ、このゲームは面白いから良いんだけどさ」
ミレニアム生B「……よし、ここはこう!そしてこのまま……こうっ!」
パチ…パチパチ……
ミレニアム生B「決まった……よし、クリア!やった!」
ミレニアム生B「……って、あれ?なんかこの筐体光ってない?」
ミレニアム生A「どうした?……って、うわ、なんか光ってる」
ミレニアム生A「まあ、ちょうどいいところに警備用ドローン飛んできたし、これ経由でセミナーに連絡すれば……」
ピ…ガガッ……
ダダダダダダダダダダダダダダッ
ミレニアム生AB「「うわあっ!!」」
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セミナー
ユウカ「これは……一体どうなってるの!?」
ノア「各地から問い合わせが殺到してますね……今はまだ捌けてますけど、そのうちパンクしちゃうかと」
ノア「幸いなのはエンジニア部やゲーム開発部の子たちへの非難がかなり少ないことですね」
ユウカ「なんだかんだで皆信用されてて良かったわ……」
ノア「あ……エンジニア部、ヴェリタス、C&Cから通信が来てます」
ユウカ「繋げてちょうだい」
ネル「よお、取り敢えず筐体は破壊して回ってる。チビ共には悪いけどな……」
ウタハ「私たちは破壊された残骸から今回の騒動の原因を探っているのだが……進捗は芳しくないな……」
ウタハ「原型が残っているものが少なくてね……そのせいでかなり解析が上手くいかないんだ」
ネル「仕方ねぇだろ、中途半端だと機能停止しねぇし、再生すんだよ」
ウタハ「ああ、そこはわかってるさ。被害の拡大を抑えるのが最優先だからね」
チヒロ「ヴェリタスはハッキングに対しての防御をしてるけど……かなり厳しいわね」
チヒロ「範囲が広すぎる上に単純に相手のハッキング能力が高いわ」
ユウカ「嘘でしょ……」
???「まあ、今回ばかりは仕方ないでしょうね」
チヒロ「部長!?」
ヒマリ「私の方で確認したところ、この筐体はインベイドピラーと同じ性質を持っているようです」
ヒマリ「それと同時にホドの活性化も確認出来ました、間違いなく外部犯の仕業かと」
ネル「ちっ、胸糞悪いなぁ」
ヒマリ「とにかく、先生を呼んで今後どうするか決めるべきですね」
ユウカ「そう、ね……ゲーム開発部の皆にも今起こってることを伝えないと……」
ユウカ「あ、そうだ。ノア、コユキを反省室から出して、ヴェリタスの所に向かって!」
ノア「わかりました!」
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(そこにはユウカ、ネル、ウタハ、チヒロ、ヒマリが既に居た)
(そして今ミレニアムで起こっている騒動のことを伝えられた)
モモイ「信じられない!誰がやったの!」
アリス「はい、アリスも怒っています!皆で頑張って作ったゲームを利用するなんて、許せません!」
ミドリ「流石に私も穏やかではいられませんね……」
ユズ「そうだね……これは皆を元気付けるために作ったゲーム……こんなふうに利用されていいものじゃない」
ユウカ「落ち込んだらどうしようかと思ったけど……これなら問題無さそうね」
ネル「やる気満々じゃねぇか、これは負けてられねぇな」
テレス「……ああ、ゲーム開発部の成果を利用して、このような混乱を引き起こしたことは確かに許すわけにはいかないね」
"そうだね、取り敢えず何から手を付けるべきか決めていこう"
パァン
ガキンッ
拳銃のものらしき乾いた発砲音と、それを防いだ金属音がこの空間に響いた
そして痛いほどの沈黙がその場を支配し、皆の視線はある一人の人物に向けられていた
ネル「……おい、今はふざけてる場合じゃねぇんたぞ」
ネル「テレス」
皆の視線の先には薄く銃口から硝煙がのぼっている拳銃を構えたテレスがいた
テレス「これは驚いた、聖櫃(アーク)の奇跡によって防がれると思っていたのだが、ネル先輩が間に合うとはね……」
テレス「流石はミレニアムが誇るダブルオー、約束された勝利の象徴……本当に素晴らしいよ」